テニスのために、オルソケラトロジー(夜するコンタクトレンズ)

Photo by Saketh Garuda on Unsplash

(更新:6月8日, 2022)

オルソケラトロジーとは、特殊加工してあるハードコンタクトレンズを夜寝ている間に装着し、近視を矯正する技術です。

わが家の高校生・大学生2人も、かれこれ7年やっています。

ネットニュースでもたまに記事をみかけるようになりましたね。特に、スポーツされるお子さんを持つ保護者で、気になる方もいらっしゃるかと思い、今回はオルソについて、わが家の体験を書きたいと思います。

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オルソケラトロジーを始めた理由
使用方法と費用
効果、わが家の場合
大変だったこと(注意点)
いつまでやるか
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オルソケラトロジーを始めた理由

こちらに来てから学校で、視力チェックがありました。上の子が小学校4年生、下の子が2年生くらいだったでしょうか。眼科で詳しく見てもらうように言われたのですが、こちらでは日本のように、0.5とか1.2とかいう聞きなれた基準で言われず、補正視力(-1.0とか-0.5とか)で言われるので、どれくらい悪いのかピンと来ず、本人たちに聞いても「見える」というので、仮性近視かな~と気楽に思ってしまい、それから2年間、ほっといてしまいました。

2年後、また学校で検診があり、言われた数値が前回よりも2倍くらい高く、とにかく急激に悪化しているようでしたので、慌てて、眼科で検査してもらいました。

結果は、近視で、眼鏡が必要と言われました。

どくれくらい悪かったかというと、これは、想像の域でしかないのですが、当時筆者の視力が両目裸眼で0.7で矯正視力-1.0でしたので、矯正視力-2.5とか、-1.5とか言われた子どもたちは、筆者の視力よりも悪かった、ということになります。

とてもショックでした…。というのも、筆者は小学6年生頃まで、視力両目とも1.2~1.5くらいありましたから、子どもはそんなものだろうと思っていたからです。

眼科医に聞いてみると、学校が始まる小学校1年生あたりから視力が落ち始める子が多く、それは、成長期が終わる年齢まで、落ち続ける傾向があるとのことでした。遺伝的な要因もありますが、以前よりも外遊びが急激に減ったことも原因として指摘されているようです。スポーツはやる方でしたし、テレビは遠くに離れるよう促し、タブレットでゲームもそんなにやらせていなかったのですが…

とにかく、その時の検査で、特に2番目の子は、黒板の字も見えていないことが判明し、眼鏡が必要ということになりました。

ところがわが子たち、「めがねはやだ」と言うのです。理由は良く分かりませんが、2人とも、当時から学校ではスポーツマンで通っていたので、眼鏡はかっこ悪い印象があったのでしょうか…良く分かりませんが、眼鏡がいやなら、コンタクトレンズは?という話になりました。

ですが、コンタクトは日中なにかあったらやっかいですし(目にゴミが入る、落っことす、etc.)、眼鏡かコンタクトか決めかねていると、3つ目の選択肢として、オルソケラトロジーを眼科医が教えてくれました。

筆者は聞いたことがなかったので、初めて聞いたときは、なんと素晴らしい技術なんだろう!と思いました。寝ている間しか装着しないのなら、昼間は裸眼でいられるのでやっかいなことも起きません。

子どもたち2人とも、「それがいい!」ととびつきました。

その頃からテニスを始めていたので、眼鏡よりも視界が広くとれるという利点も良いと思いました。

また、オルソには、当時から近視の進行を抑制する効果が報告されており、実は筆者としては、これが一番の決め手でした。その時で既に親よりも視力が悪く、成長期が終わるまでにこれ以上どれだけ視力が悪化してゆくのかと考えると、それ以外に手はない、と思えるほど、筆者はオルソ賛成でした。

使用方法と費用

さっそく、眼科医にオルソを扱っているコンタクトレンズ屋さんを紹介してもらいました。最初の訪問では、精密検査をし、オルソに適した眼球かどうか判断してもらい、OKでしたので、レンズをオーダーしてもらいました。

使用方法ですが、夜寝る直前、ベッドに入る最後の行動として、オルソのレンズを両目に入れて8時間寝ます。装着する時には、保湿性の高い涙目薬をレンズの中にいれてから装着します。

朝起きて、まず涙目薬を目に入れ、コンタクトと涙目薬をなじませます。それから専用の小さな吸盤を使ってレンズを外します。ハードレンズなので、毎日洗う必要があります。初期は、レンズを洗剤2種を使って毎朝約10分かけて洗っていましたが、最近は、洗剤一種で洗ったら、夜装着するまで発泡洗浄液につけておくだけになりました。2番目の子は始めた当時小学校低学年でしたから、幼すぎて大丈夫かな~と最初は少し心配していましたが、本人がやると決めたからか、その日以来、きちんと毎朝自分で洗っています。汚れが付着したままだと、最大限に視力が矯正されないそうです。

2〜3週間おきに、たんぱく質除去剤に20分間つけ、その後通常通り洗います。これは、2〜3週間おきに電子カレンダーに繰り返し登録してあるので、前日に筆者が「明日は、たんぱく質除去の日だよ~」と2人をリマインドし、除去剤を机の上の置いておいています。

3~4か月に一度、コンタクトレンズ屋に検診に行きます。スイスではコンタクトレンズ医と言えば、専門の資格を大学で取得する必要があるようで、店長であれば、博士過程まで大学で修了している方がほとんどです。ちょっと最近は、慣れてきたので半年おきの検診になりつつありますが。

レンズは、初期は言われるがままに1年ごとに新しいものを作っていたのですが、高額ですし、日本では2~3年使用しているケースもあるようなので、現在は2年おきの作り替えにしてもらっています。こちらの担当者曰く、毎日洗うとレンズ内部が消耗するので、1年ごとに作り替えた方がきちんと矯正される、とのことでした。保守的なスイス、だからかもしれませんね。

費用の概算(1人当たり/年)です。

  • コンタクトレンズ2枚 1000CHF(年数回の検診費込)
  • ケア用品 500CHF
スイスでは、保険の種類にもよりますが、semi-prive以上であれば、コンタクトレンズ費は保険適用になります。毎年作り替えることにはなりますが、もしかしたら、日本よりも安くつくのかもしれません。どっちもどっちといったところでしょうか。

子どもたちの担当医がとてもプロフェッショナルで誠実でなので、わが家はとても満足しています。

でも、高額ですよね。わが家の末っ子も、お世話にならなくてすむよう、今から願うばかりです。

効果、わが家の場合


さて、筆者が最も期待した、肝心な効果です。

まず、日常的に、子どもたちの視力は期待通りで、教室の後ろに座っても黒板(白板)は見えていますし、テニスも期待通りに裸眼でプレーができています。以前は、ミスジャッジも多くよく主催者に怒られていましたが、今思えば、良く見えていなかったのかもしれません。

そして、オルソを初めて7年たちましたが、子どもたちの裸眼視力はほとんど変わらないままです(=近視は悪化していない)。毎年作り替えるレンズの補正視力は、2人とも、初期の数値とほぼ変わらないそうです。

ネット上で、オルソの近視進行を抑制する効果について日本とタイの事例を読みましたが、わが家でも、その効果が得られています。

一人でのケアが心配だったので、以前2泊3日の学校合宿で、オルソを持って行かなかった時がありました。その時は、2日目の夜には視力がほぼ戻った(見えなくなる)とのことでした。その時は、持参していた眼鏡で過ごしたそうです。

現在では、友人宅に一泊程度であればオルソは家においてゆき、念のため眼鏡を持っていっています。数泊~1週間以上の学校やテニスキャンプにはオルソを持参し、2人とも現地で一人でケアをして装着できるようになりました。念のため、バックアップとして眼鏡は持参しています。

大変だったこと(注意点)

もちろん、始める前に色々ネットでメリット・デメリットについて眼科医やコンタクトレンズ医に聞いてみたり、ネットで調べてはいたのですが、一つ、わが家特有の大変なことがありました。

それは、一人の子が繊細(細かいことに敏感)…ということでした。

オルソは安定するのが、始めてから5日~1か月くらいたった頃、と言われています。寝る姿勢により、コンタクトレンズがずれた場合、最大限視力が正しく矯正されません。

要は、最初の頃は、どの程度寝相が影響するのか分からないですし、どのように朝見えているのが正しい状態なのかが本人たちにも分からず(筆者にはもっとわかりません!やったことないのですから)、最初の2週間は、ほぼ毎日担当のコンタクト医に電話していました(笑)。

一番の盲点は、コンタクトが夜寝ている間にずれていると、朝起きると物が少し2重に見えるのだそうです。午後になるほど視力は改善するのですが、最初はそれが分からずに、わが子の一人、そのたびに朝大パニックでした(笑)。しかも、2重に見える視力を矯正する方法がなく(眼鏡かけても2重に見えることは変わらず!)、最初は、もう一度装着してとりあえず一時間寝てみる(少し改善したみたいです)とかやってみました。

幸い夏休み中に始めたので、必要があれば、すぐコンタクト医に連れていけたのですが、テニスの合宿中でしたので、「ボールが2個見えるから、テニスできない…」とテニスに行かない日もあり、半分合宿費を無駄にしてしまいました。テニスのために始めたのに、これでは…と思ったこともありました。

でも、ふと疑問に思いました。なぜか、同時にオルソを始めたもう1人の子が、不満をもらしたことがなかったからです。

本人に確認してみたところ、実は、もう1人の子も、少し2重に見えることもあったそうです。ただ、本人いわく、「そんなもんかな、と思って。テニスボールを打てないほどじゃないし、午後になったらましになるしね。」と、あまり気にしていない様子でした。この子もテニス合宿中でしたが、1日も休むことなくプレーをしていました。

要は、その子の性格によって、同じ現象を体験しても、感じ方、リアクション、対処方法が違う、ということです。細かいことに敏感なお子さんの場合、是非、お気を付けくださいね。

ちなみに、最初の1か月を過ぎた後は慣れたせいか、2重に見えることもなくなり、何も言わなくなりました。それ以来、2人とも満足していて、毎日夜つけては、せっせと毎朝手入れを頑張っています。

いつまでやるか

今のところ、成長期(近視が最も進行する期間)が完全に終わる、成人になるまで(大学卒業)くらいまでかな、と思ってます。それ以降は、自分の判断で、自分の稼いだお金で続けたければ続ければよいのでは、と思っています。その先は、眼鏡にするもよし、日中のコンタクトレンズでもよし、レーシックも検討対象にできる年齢ですから。

また、オルソは8時間睡眠を必要としているので、社会人になってそれが課題になるかな、と思っています。まだ上の子がテニスのレッスンを続けていた頃、勉強との両立が忙しく、あきらかに6時間睡眠の時期がありました。それでも、本人は見えていたようですが、定期チェックにて、コンタクト医は矯正視力が最大限でないし、涙の状態も不安定で、あまり目にとっていい状態ではない、と注意を受けました。社会人になっても健康面からも、最低でも7時間は睡眠を確保したいところですよね。

ちなみに、テニスの保護者と話すと、わが子2人がオルソをやっていると聞くと、たいていびっくりされます。興味ある方がいたので、通っているコンタクトレンズ屋さんと担当者を紹介したら、実際に始められました。お子さんも、とても満足されているそうです。

特にスポーツをされているお子さんや、近視の進行を抑制したいお子さんに、オルソケラトロジーをお勧めしたいと思います。

以上、オルソケラトロジーについて、わが家の体験でした!

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