勝てるジュニアの条件とは(スイスの州大会優勝から学んだこと)

<Photo from スイス便り The Blog from Switzerland>

(更新:12月26日, 2019)

こんにちは。今回は、息子の州大会U14優勝を記念して、「勝てるジュニアの条件」について、書いておきたいと思います。

今年のUS Open男子の決勝では、ナダルが大接戦の末勝利し、マッチポイントが決まると、コートに倒れこんでいましたね。息子もこの夏州大会で優勝した時に、マッチポイントが決まるとコートに倒れ込み両手を上げてガッツポーズをしていました。

大接戦、大健闘の末勝った爆発的に嬉しい気持ちが、とても伝わってきました。優勝できるかな、と思ってはいても、本当に様々な条件が満たされないと優勝はできませんので、だからこそ、本当に嬉しかったのだと思います。

特に参加者のうちのたった1人しか優勝できないテニスは、とても子どもには酷なスポーツだと思います。

ですから、優勝できたら儲けもん、くらいの軽い気持ちでトーナメントを楽しむ方がいいかな、と筆者は思います。そうでないと、本人もプレッシャーにやられてしまいますし、筆者も軽い気持ちじゃないと、身内の試合なんて見ていられませんから。

それでは、これまで筆者が息子たちの優勝トーナメントを観察してきた中で感じている「勝てるジュニアの条件」です。あくまでも筆者の観察上なので、ご参考まで。

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「勝てるジュニアの条件」by 筆者
  1. 絶対勝ちたいと思っている
  2. 最後まで諦めないメンタルを持っている
  3. 当日の自分の調子が良い、もしくは、相手の調子が悪い
  4. シード選手でも、頑張れば勝てそうな相手
  5. ねらった場所に、思った通りのボールが打てる
  6. 相手との相性が良い
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絶対勝ちたいと思っている

これは、最低限必要かな、と思います。たまに子どもたちの試合を見ていると、諦めちゃったかな、と思われるプレーがありますよね。でも、叱らないであげてくださいね。

私は、何度も何度も、息子たちの、あーあ、諦めちゃったんだな、と思われるようなプレーを見たことがあります。でも、試合が終わって聞いてみると、どうも勝ちたくなかったわけではないようでした。

勝ちたいと思ってはいたけれど、どうして良いのかわからなかったようです。

なるほど…もったいないですよね。でも、試合中は余裕がなく何もアイデアが浮かばなかったのですから仕方がないです。では、どうすれば良かったのか考えて、次回また頑張れば良いのだと思います。

これが、優勝する時のトーナメントでは、「俺は絶対勝ちたい!」というオーラが出ているから不思議です。自分に対する声がけも、側から聞いてポジティブです。あぁ、勝ちたいんだな、と誰にでもわかります。

一方で、負ける時は、相手の気迫の方が強ような気がします。そういう時の相手は、何があってもめげていません。めげないから、プレーが落ちないですよね。

少なくとも、「絶対勝ちたい!」という気持ちはタダですから、絶対に強く思っててほしいですよね。その方が良い打ち合いになりますから。

間違っても、試合後負けた我が子に「お前は、勝つ気があるのか!」と罵倒しないで下さいね。それ、立派なモラハラですから。親子だから許されるものでもありません。保護者の期待に反し、ビクビクした子になってしまいますし、逆効果です。コーチとしても問題だと思います。特に普段、「落ち着いて」「冷静に」とアドバイスしているならなおさら、保護者やコーチが良いお手本として行動してあげて下さい。試合結果についての過剰反応は、良くないそうですよ。「【保存版】ジュニアテニス、親のためのガイド 」にも記載したITFのガイドの一読をお勧めします。

もし筆者が言うなら「…勝つ気はあったのかな?」と、質問系ですね。「当たり前じゃないか!」と返事が返ってきて以来、そんな失礼な質問はしなくなりましたけれども。「そうか、じゃぁ、勝つためには何をすればよかったんだろうか?」と筆者は良く息子と一緒に考えています。まずは、息子が先に考えて。そっか、母はこう思ったよ。じゃぁ、こんなことを練習すればいいのかな。といった具合に、コーチにフィードバックして、練習に役立ててもらっています。

しーん、と返事が返ってこなかったら、「今回は負けて悔しかったね。勝ちたいと強く思っている方が、勝てるらしいよ?」と疑問を投げかけるように、自分で考えさせてあげる方が、最終的にはメンタルの強い子が育つはずです。

最後まで諦めないメンタルを持っている

息子がこの夏州大会U14で優勝した時、5試合中ファイナルを含む3試合が、1セット目を取られてからの、第2、第3セットを取り返しての勝利でした。

セミファイナルは、午後の炎天下で4時間近くもかかりました。ファイナルでは、足裏に豆がいくつもいくつもできていました。ここまでしなくても…保護者としては勝たせてあげたいけど、早く試合を終わらせて休ませてあげたい、と言う気持ちも本音でした。ファイナルの2セット目、パートナーは家で末っ子と留守番をしていましたが、「もう終わり(負けそう)そうだから来なくてもいいよ。」と筆者は電話してしまいました。

ところが、2セット目を取り返し、結局3時間近くかかって、息子は優勝しました。別のトーナメントでも、似たようなパターンを見たことがありました。

理想は、1時間半くらいでエネルギーをあまり消費せず、ストレートで勝つことです。でも、相手が同格の場合、どちらが勝ってもおかしくない場合は、このように拮抗した試合展開になることが多いのです。特にそういった場合、最後まであきらめないメンタルは、強い武器となります。

もちろん、長期戦に強い体力も基盤としては必須ですが、その体力を引き出すのは、やはり強いメンタルですし、体力消耗戦では、最終的にメンタルが強い方が勝ちます。

過酷な状況の中優勝できた息子が、コートに寝転び両手を上げてガッツポーズをした時には、筆者も本当に嬉しかったです。相手選手の保護者がおめでとう!と声をかけてくれた時には、不覚にも泣いてしまいました(筆者が)。相手選手のスポーツマンシップには感謝です。双方共に正々堂々と戦った、本当に良い試合でした。コーチも笑っていました。

当日の自分の調子が良い、もしくは、相手の調子が悪い

神頼みのような気もしますが、大人の調子って毎日違いますよね。それと同じか、もしくはそれ以上に子どものコンディションも毎日違って当たり前のようです。

試合当日のコンディションがベストになるよう、風邪をひかないように気をつける、前日は早くねる、アップはしっかりする、などの対応策はとるとして。日頃から、調子が多少悪くてもプレーしておくことで、試合中に調子が悪くなった時の動揺を減らすことができます。

自分の調子が毎日違うということは、相手選手の調子も毎日違うかもしれないということです。今まで勝ったことのない相手でも、今日は最悪の調子かもしれません。ですから、今まで勝ったことがないからと言って、最初から諦めるべきではないのです。もちろん、期待は禁物です。少なくとも、最初から自分で勝敗を決めつけるようなことのないようにしたいものです。

また、自分の調子が良いと、相手を追い込むことができ、結果相手の調子を落とすことができるかもしれません。元々相手の調子が悪い、または、自分の力で相手の調子を落とす、どちらにしてもそのような状態だと、勝てる確率が高まります。

シード選手でも、頑張れば勝てそうな相手

参加するトーナメントの出場者は、強くても同じくらいの選手たちですか?

スイスでは一番弱くてR9(R9〜R1)、一番強くてN1(N4〜N1)というランクがあります(詳しくは、「【保存版】スイスのジュニアテニス事情」ご参照)。もし、ご自分のお子さんがR5だったとしたら、その前後のR6〜R4位の選手であれば、全員倒して優勝できる可能性はとても高いと思います。

現在R9でも、大丈夫ですよ。筆者の息子たちも含め、フェデラーだってR9から始めたのですから。ちなみに、長男の初めての優勝はR7の時、次男はR6の時でした。いずれも、R7やR6までしか出場できないトーナメントでした。

優勝経験をさせてあげたいと思っているのであれば、自分のランクより上すぎない選手で構成されいているトーナメントを選ぶことも大切になってきます。

頑張れば勝てそうな子しか出ていないトーナメントだと、俄然、息子の気合いが違うのが分かります。以前は、息子の表情や態度で、「あー…この強い選手か…」と考えているのが分かりました。もう、その時点で、負けを認めているようなものですよね。で、本当に負けるんです…かわいそうでした。さすがに今は、何度か優勝経験も経て、自分の頑張り次第でかなり強い選手でも倒すことができるかも、と考えられるようになってきたようですが。

そのためには、どんな弱い相手でも試合で勝つ経験、どんなに小さなトーナメントでも優勝経験することがとても大切になってきます。

特にまだ勝つことに慣れていない、または優勝しなれていないお子さんの場合は、トーナメントを選ぶ場合、頑張ればシード選手でも倒すことができそうなものを選んであげると、その優勝経験により、とても大きな自信を身につけてくれると思います。

その際、身近な強い他のお子さんと比較をしないことが大切です。同じクラブの強いお友達と同じトーナメントでなくてもいいんです。各お子さんのメンタルは違いますから、一度強いお友達と同じトーナメントに出て、お子さんの自信が打ちのめされてしまった場合は、躊躇無くレベルを落としてトーナメントに出場させてあげることの方が、本人の自信形成や上達には何倍ものプラスになるはずです。

プロだって長いブランクの後は、レベルを落とした試合に出場していますよね。ポイントが足りないということもあるかと思いますが、その一番の理由は、自信を取り戻すためだと筆者は考えています。

ねらった場所に、思った通りのボールが打てる

基本の技術です。まるで漫画「ベイビーステップ」に出てくるような理想論ではありますし、相手の打ち返してくるボールにもよりますよね。でも、試合で自分がイニシアティブを取るには、これができないとできません。打ち負けて、ねらった場所に打てなかったとしたら、相手に勝つのは相当難しいでしょう。

試合当日は、個々の技術よりも戦略重視で戦うべきです。できないことに気を取られる必要はありませんので、できる技術をつないで、ポイントを取る方法を考えます。

結果的に、ねらった場所に打てればまぐれでもよいのですが。息子の試合を見ていると、意図的に狙っているものもあれば、まぐれもあるようです。確認すると必ず、「ねらってるに決まってるじゃん」と言われるので、あまり聞かなくなりましたが。

ちなみに、家族で球出し練習をする時に、球が出てから息子が打つ直前に自分で「ストレート」または「クロス」と宣言してからコーンを狙って打つ、と言うことをよくやりました。

負ける試合では、相手よりも技術不足、ということがよくあるので、根気強く練習していきたいですね。これは自分の努力で高めていけることなので、将来的な楽しみも増えていきますよ。

相手との相性が良い

どんな相手との試合も遜色なく戦い、勝つべきなのですが…しかし、やはり相性というものはあると思います。相手の武器がたまたま自分の打ち返しやすい球種とか、自分の得意技が相手の弱点だったとか。

相性の良い相手と当たると、比較的大変な思いをせず勝利できることがあります。トーナメントにおいて、相性の良い選手と多く当たれば当たるほど、体力を消耗せず勝ち進めるので、トーナメント全体を通して有利になります。

でも、誰と当たるかは、自分ではコントロールできませんよね。ランクやポイントによるところが大きいようですが、息子たちのレベルであればほぼ「運」ですから、気にしても仕方ありません。といいますか、気にする必要はないと思っています。ただ、優勝するためには、相性の良い相手と当たることは有利です。プロの試合ではこういった偶然性もあり、誰が勝つかは分からなくて、試合を観る側としては面白くなるのかもしれませんね。

誰しも得意不得意ありますし、できることといえば、次に同じような選手に当たった時に対応できるように、試合終了後練習することですよね。

先日のトーナメントで見た試合です。息子の試合ではありませんでしたが、とてもパワーショットの打てる、強い選手Aがいました。A選手は、相手の年下格上のB選手から1セット目を先取していました。ところが、2セット目に入ると、B選手はパワーでは勝てないと見切り(まだ12歳です)、ベースライン近くに深いハイボールを打ち始めました。調子の狂ったA選手は苛立ちを隠せませんでした。隠すどころか、B選手を罵倒し始めました。A選手の親も、「格上の選手がこんなプレーをするのか」と憤りを隠しません。でも、B選手は何も悪いことはしていません。A選手の暴言をB選手が主催者に通告することで、A選手は主催者に注意を受けました。

結局2セット目はB選手がとり、最後はスーパータイブレークの末、B選手が勝ちました。今回の場合、A選手にとって、B選手は決して相性の良い相手ではありませんでした。自分のプライドを捨てても、勝てる戦略を選べるB選手は、A選手にとって苦手な選手だったということです。

よく筆者も息子に、パワーショットの得意な選手に、ポヨ〜ンとしたハイボールやってみれば?と言っているのですが、いまいちプライドが邪魔して、やらないんですよね。そもそも、パワーショットに対するリターンでポヨ〜ンとしたハイボールをベースラインに打ち返せるのって、高い技術力が必要なんです。

実は、普段からパワーショットしか練習していないと、とっさのハイボールは打てません。普段、いかに友達と遊びで打ち合っているか、が大切になってきます。こちらでは、そんな気楽な時間に、小さい頃からまた抜きを練習しています。

話を戻します。優勝するためには相性の良い相手と当たることで有利に試合を運べるのですが、誰と当たるかは自分がコントロールできることではないので、悲観的になる必要は全くないと思います。優勝できなかったことを全てこのせいにするのはどうかと思いますが、優勝はこういった偶然の要素も味方してくれないと難しいので、めげずに次の試合に向けて練習し、前に進んでいけば良いと思います。

さて、いかがでしたでしょうか。筆者が見てきた「勝てるジュニアの条件」。
  1. 絶対勝ちたいと思っている
  2. 最後まで諦めないメンタルを持っている
  3. 当日の自分の調子が良い、もしくは、相手の調子が悪い
  4. シード選手でも、頑張れば勝てそうな相手
  5. ねらった場所に、思った通りのボールが打てる
  6. 相手との相性が良い

結果論ですが、息子たちが優勝できたトーナメントの傾向を分析すると上記のような条件揃っていたような気がします。この中で、自分でコントロールできるのは1番から4番です。5番も練習次第では、かなり完璧に近づけることができます。ただし、6番だけはコントロール不能です。コントロール不能なものが一つでもあるので、優勝はやはりコントロールできないもの、と結論づけておいた方が良さそうです。

また、優勝だけしたいのであれば、レベルの低い大会を選び続ければ限りなく優勝し続けることが可能です。しかし、それは、最終的なゴールではありませんよね。

息子のゴールは明確で、「より強い選手になること」。彼のコーチの目的も最初から、”I just want you to be better(上手になってもらいたいだけだよ)” です。

しかしながら、子どもの自信ややる気を育てるためには、試合スケジュールを組む際に、今回あげたような条件を考慮してあげることが必要になってきます。戦略的ですよね。とはいえ、他の家族の予定もありますし、筆者は理想を念頭におきつつ、無理のない範囲で現在は息子の試合スケジュールを組んでいます。

最後に、息子が優勝した州大会の簡単な備忘記録として。

スイスは26の州でできています。その州全てで州大会が行われているかは不明ですが、筆者の住む州では、今回U14男子には75名が参加しました。その中で、息子は同格競合を数名倒し、優勝することができました。先にも書きましたが、5試合中ファイナルを含む3試合が、1セット取られてからの、2、3セット目を取り返しての勝利です。

体感温度35度くらいの炎天下の中、3〜4時間かけての勝利が2回、ファイナルまでに足に豆がいくつもできました。満身創痍といった感じでした。

ダブルスも参加していましたが、シングルスを優先すべく体力温存のため、ダブルスは途中棄権をしています。ダブルスのパートナーおよび待機していてくれた相手選手たちには感謝です。

ファイナル当日は午前中に優勝した後、午後にはクラブ対抗戦にてシングルスとダブルスを同日に戦い、こちらも勝利をおさめました。本来ならば、午後は州大会の表彰式。でもクラブのエース、チーム戦が大好きな息子は、迷うことなくクラブ対抗戦にかけつけました。もしかしたら、州大会優勝なんて、もうないかもしれないのに。

家に帰ると、なかなか長男がおめでとうと言ってあげません。「絶対、あなたに一番言って欲しいと思っているよ。」とこっそり伝えると、やっと「おめでとう!」と言ってあげていました。次男は慣れない長男からの祝福に、「いぇ〜い、優勝したぜ!」と両手をあげていました。「あー、ちょっと大げさだよね。」と長男をフォローすると、「照れ隠しだよ、わかってるよ。」と弟を誇らしげにかばってくれました。

そして、今宵は、クラブの一年に一度のパーティです。ベストプレーヤーとして、今年も表彰してもらえるそうです。バウンシーキャッスルとミニテニスも設置されるので、末っ子を連れて遊びに行ってきます。

テニス親として、たくさんの思い出をもらった、良い夏2019でした。

筆者の主観ですが、「勝てるジュニアの条件」が、少しでも皆さんのご参考になれば幸いです。

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