女性の再就職支援プログラム② by スイスのSt. Gallen国立大学


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今は家庭の事情で離職中だけど、いずれはある程度責任のある仕事に戻りたい思っている方、いらっしゃいませんか?

今回は、そんな方たちのために、スイスのSt. Gallen(ザンクト ガレン)国立大学の、女性の再就職支援プログラム、Women Back to Business Program(WBB)について書きたいと思います。

たまたまFBの広告で見かけて、どんなカリキュラムなんだろう?と興味を持ち調べてみたのですが、とても良いプログラムだと思ったので、皆さんにご紹介したいと思いました。

St. Gallen大学は、知り合いのお子さんが進学されたことで知っており、ビジネスマネジメントの分野では、スイスの国立大学の中で一番人気だと聞いていました。ファイナンシャルタイムスのランキング2018によれば、ビジネススクールとしてはヨーロッパで4位ですが、ドイツ語圏においては1位です。

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プログラムが創設された背景
Women Back to Business Programとは
説明会に参加してきました!
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プログラムが創設された背景

WBBの資料によれば、スイスには大学を卒業後、家庭などの事情で離職している女性が約50,000人います。一方で、多くの業界において、優秀な女性経営陣が不足しているとのこと。先日のWorld Economic Forum(世界経済フォーラム)でも、これからの経営の方向性にDiversity & Inclusion(多様性とインクルージョン)は欠かせないテーマであると言われているわけですから、女性が必要とされているのは驚きではありません。日本と状況が、とてもよく似ていますね。

そこで、仕事経験のある再就職したい女性を再トレーニングし、労働市場に戻すことを目的としてできたプログラムが、WBB です。

Women Back to Business Programとは

St.Gallen国立大学のエグゼクティブスクール(マネジメント系の大学院)の多様性とマネジメントが専門の女性教授の下で設立されました。

設立当初は、卒業生の最大の目的は再就職することだったようですが、現在の目的は再就職が60%、転職が40%となっているそうです。

全13モジュール(科目)で構成され、半分は学科(リーダーシップ、マーケティング、財務等)で、半分はコーチングやスキルワークショップです。さらに、ケーススタディのグループワークとプレゼンテーション、個人エッセイ(レポート)、5日間以上のインターンシップが課せられます。全てのモジュールを終了すると21単位を取得でき、St. Gallen大学Executive School of Managementより修了証がもらえ、修了生ネットワーク(卒業生ネットワーク)に登録されます。

1単位当たり、およそ30時間の勉強時間が必要とされています。21単位取得するので、全体で約630時間、勉強に費やすことになります。基本、1年間のプログラムですが、最長で2年かけてもよいとのこと。

当プログラムですごいなぁと思ったのが、国立大学が率先して作ったプログラムであるということと同時に、名だたる民間企業や公的機関がスポンサーとなっていることです。ざっと数えたところ、約50社もありました。詳しく知りたい方は、以下のプログラムの公式ホームページを是非チェックしてみてください。

WWB Program by St. Gallen University

スポンサー企業・組織は、寄付金、会議室の提供、ケーススタディの提供、インターンシップの提供など、様々な支援を行っています。寄付金から奨学金を支給したり、実際に卒業生を採用してくれる企業もあるそうです。

説明会に参加してきました!

とても興味があったので、さっそく説明会に行ってきました。スイスのドイツ語圏、St. Gallen(ザンクトガレン)にある大学なので、説明会はドイツ語圏で行われることが多いようですが、フランス語圏のローザンヌでも説明会が開催されています。今年から、オンライン説明会も始まったようです。

参加者は約20名の女性、実に国籍や離職期間も様々でした。ですが、
  • 子育てを大切に思っていること、
  • 大切な子育ての時間を多少なりとも削って再就職するのだから、自分にとって、または、社会的に意義のある職種に就きたいと思っていること
などは、多くの参加者の共通認識のように思いました。

たまたま今回はお子さんのいる参加者が多かったのですが、子どもがいなくても、転勤族の駐在妻の方々も家庭の事情で離職せざるを得ないわけですから、たまたま発言しなかっただけで、会場にいらっしゃったのかもしれません。

また、「オンラインで求人に応募したけど、一度も面接に呼ばれたことがなく、自信を喪失している。」という意見が多くありました。プログラム担当者によれば、実際、スイスの求人の75%は表に出ないと言われており、ネットワークが最大のカギ、だそうです。

そうなんでしょうね…、そのようなことを薄々と感じてはいましたが。はしにも棒にも引っかからない、とはこのことです。

ネットワークとは、日本で言う、人脈ですね。
(コネ、とは少し違う気がします。)

これ、スイスで公的な失業手当をもらっていた友人も、スイス版ハローワークの職員に言われた、と言っていました。スイスでは、ほとんどの人が、人づてに仕事を見つけるのだそうです…

理由は、スイスという国(人)はとても慎重で(だから精密機械の時計作りが得意?)、間違いを起こしたり失敗したくないがゆえ、人からの推薦がないと、見知らぬ人を採用したがらないからではないか、と言っていました。

気持ちは分からなくもないですが…。

いずれにせよ、スイスで就職したいなら、そういったネットワークを自分で見つけて、入っていかないといけない、ということですね。

一方で、離職期間についてはスイスは寛容なようです。というのも、WBBプログラムの参加者の離職期間は2,3年~10年以上だそうで、離職期間の長さは、気にしなくても大丈夫!と言っていました。

ドイツ語のプログラムもあるのですが、そちらの参加者平均年齢は50代だそうですよ。英語プログラムは30代~40代。ドイツ語の方は、スイス人が多く、スイスでは小学生までは水曜日に学校がないので、子どもがティーンエイジャー(中学生)になってからゆっくり復職・再就職を考え始める人が多いからだそうです。一方英語スピーカーは、早くから子どもを預けての仕事復帰にためらいがなく、世代が若目なのだそうです。

また、スイスで就職する際に、公用語(ドイツ語、フランス語、イタリア語)が話せる必要があるかどうかということについては、WBBの卒業生であれば、それほど障害にはならない、とのことでした。心強いですね!というのも、卒業生の再就職先は国際企業であることが多く、社内公用語がほとんどの場合英語だからだそうです。実際に、WBB英語プログラム卒業生の中には、フランス語やドイツ語を話せなかった生徒もいたそうですが、それぞれ無事再就職を果たしたそうです。

卒業生の再就職率は、平均で75%、卒業年が古いほど再就職率は95%くらいで、最近であるほど65%くらいだそうです。これは、卒業してから数年かけてじっくり条件にあった再就職先を探すことが多いためとのこと。内訳は、民間企業、公共組織、起業、様々。再就職していない残りの25%は、家庭の事情でまだ休職中とのことです。

ドイツ語圏の大学なので、 スポンサー企業はドイツ語圏に多いのですが、現在フランス語圏の企業、組織へもすでにコンタクトを取り始めており、現在進行形で交渉を進めているとのことでした。

気になるインターンシップや再就職先は、自分で探さなくてはなりません。もちろん、WBBプログラムは、再就職先を探すためのプログラムですから、そのためのコーチングやワークショップがあります。また、スポンサー企業の中には、プログラム参加者の採用にとても意欲的な会社もあるし、WWBプログラム卒業生の需要は、スイスの労働市場ではかなり高いそうで、結果、これまでの参加者や卒業生は、ちゃんとみんな自分でインターンシップや職を探してきているとのことでした。

ちなみに、以前UBS(Union Bank of Switzerland)の女性の再就職支援プログラムの記事を書きましたが、

女性の再就職支援 by UBS

昨年はWBB卒業生が数名採用されたそうですよ!ご興味ある方は、是非こちら↑の記事もご覧ください。ちなみに、UBSはWBBのスポンサー企業の一つです。

説明会に行ってみただけですが、皆が家庭を大切にしながらも、自分のキャリアについて真剣に考えている姿にとても刺激を受けました。また、自分のことを皆に話すことで、自分の理解者が増えたような気がしました。さらに、返答が難しい質問にもプログラム担当者が真摯に答えてくれ、彼女の私たちをサポートしたい、女性が活躍できる社会を作っていきたい、という熱意がしっかりと伝わってきました。再就職を目指している女性たちの、心強いサポートプログラムだな、と思いました。

以上、Woman Back to Business プログラム by スイスのSt. Gallen国立大学をご紹介しました。

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