マドリード オープン 2019 大坂なおみ vs ベンチッチ(スイス) 戦に見る、クレーコートの戦い方(動画+)

<Madrid Open 2019 大阪なおみ vs ベンチッチ(スイス)
WTA公式アカウントより> 

昨日は、惜しかったですね、大坂なおみ選手。現在、スペインでは、マドリードオープンが行われています。

筆者の住んでいるスイスの街では、夕方のラジオニュースにて、毎日必ずと言っていいほど、スイス人テニス選手の試合状況が放送されます。スイスのトップ選手と言えば、以下の5人で、人口たった800万人しかいない国から、これだけのトップ選手が出ているのはすごいことだと思います。
  • ロジャー フェデラー(男子)
  • スタン ワウリンカ(男子)
  • ベリンダ ベンチッチ(女子)
  • ティメア バシンスキー(女子)
  • マルチナ ヒンギス(女子)
ヒンギス選手は既に引退していますが、その他の選手の誰かかしらが、毎週世界のどこかでトップレベルで戦っているので、スイス人テニス選手の話題にはことかかない、ということなのでしょう。

いずれにせよ、昨日息子をテニスクラブに送る車中で、ベンチッチが3セットの上大坂なおみを、ワウリンカが錦織圭をストレートで倒したことがニュースで流れ、せっかく家に帰ってからテレビでゆっくり見ようと思っていたのに、悲しくなってしまいました。でも、一方でスイスに住んでいる以上、やはり、スイス人選手の活躍も嬉しいのです。そんな複雑な思いで、家に帰ってから今回の「大坂なおみ vs ベンチッチ戦」をゆっくり見てみました。

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大坂 vs ベンチッチ戦を見て思ったこと
クレーコートの特徴と戦い方
ベリンダ ベンチッチ選手とは
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大坂 vs ベンチッチ戦を見て思ったこと

まず、スコアですが、大坂 vs ベンチッチ(6-3、2-6、5-7)でした。結果だけ見ても、大接戦だったことが分かります。

第一セットは、大坂選手が彼女らしい攻めで、わずか35分で取っています。アグレッシブに自信があふれたプレーでしたね。ですが、第2セットに入ると、ベンチッチ選手が落ち着いたプレーで着実にポイントを取っていき、だんだんと大坂選手のイライラが顔に出てきてしまいました。第3セットは、実は大坂選手が5-3でリードしていたんです。そこからベンチッチに挽回されてしまったのですから、よっぽど大坂選手の頭の中で何か余計なことを考えてしまったのではないでしょうか。

息子の試合と比較しては怒られそうですが、以前の息子はよくこういう試合がありました。4-1や5-1でリードしていたのに、そこから1ゲームも取れずセットを落としたことが。見ているだけでテニスの試合経験がないと、どうしてこんなことが起こるのか、さっぱり分かりませんよね。ですが今なら筆者はよく分かります。テニスの試合は時間が長いのです…長い試合中、いくらでも頭の中で余計なことを感がえられてしまうのが、テニスの特徴の一つです。

実際に、大坂選手はWTAの試合後のインタビューで、以下のように答えています(日本語は筆者訳)。
  • "Today, it was a drama, so much drama in my head"
  • 「今日は、頭の中でドラマチックに色々と考えてしまった」
  • "I know I tell you about guys I don't really care about rankings, but honestly, I would love to play the French as No. 1 because I have never played a Grand Slam seeded No. 1.
  • 「私は皆さんにランクは気にしてないといつも言っているけど、正直、フレンチオープンは第1シードとして戦いと思っている。今まで一度もグランドスラムの大会で第1シードだったことがないから」
周りからも「ここで勝ったらフレンチオープンでは第1シードだよ」、と言われていたようですが、まだ若い選手にとっては余計なお世話かと。ランキングや結果を意識した時点で、平常心ではなくなってしまうので。今戦う試合、今コートの向こうに立っている選手だけに集中させてあげたかったです。

大坂選手のジュニア時代は、ウイリアムス姉妹同様、海外の試合にはあまり出場せず、米国国内で主に経験を積んできたようです。ジュニア時代にクレーコートに強いヨーロッパ選手との戦歴があまりないので、クレーコートでの戦い方と、その間の駆け引きについては、これからの課題なのでしょう。

クレーコートの特徴と戦い方

では、クレーコートはハードコートと何が違うのでしょうか。


スイスのコートの主流は、クレー(赤土)コートです。日本でいう茶色い土とは違います。

<クレーコートの特徴>
  • バウンドした時に球威が落ちる =ラリーがハードより長くなる
  • 足元の踏ん張りがきかない、滑る=スタートダッシュや急な方向転換が難しい
  • お年寄りには、多少土でフカフカしているので膝にやさしいが、ラリーや試合時間が長くなると、選手にとっては足に負担がかかる
<クレーコートの戦い方>
  • 球足が遅くなりスライディングもできるので、走れば拾える球が多い=クレーコートに慣れた選手は、ハードでは絶対に拾えない球でもあきらめず取りに行って打ち返してくるので、じっくり戦略で戦うことを心がける。サーブ&ボレーや数回のラリーだけでは、なかなかポイントは取れないと覚悟する。
  • 急に方向転換できない特徴を活かし、相手の位置が後方であればドロップ、相手が走り出す瞬間をよく見て走り出す方向とは逆のオープンコートを狙うなどの戦術を使う
クレーコートで育った選手は、ほんとうに良く拾います。昨日のベンチッチも、良く拾ってましたね。甘いボレーは必ず走って拾ってきます。スイスジュニアの試合でも、クレーで普段練習している子は「とりあえず返す」という選手がたくさんいて、スピードサーブや数回のラリーであっさりポイントがとれてしまうハードコートに慣れている選手は、ラリー中に根負けすることが多いです。

大坂選手はサービススピードが速く攻撃的ですから、比較的ポイントが短時間でとれるハードコートに強い選手なのではないでしょうか。クレーコートではそれらが活かされないので、途中イライラしてしまったのかもしれませんね。若いですから悔しい負けを糧にし、クレーでの経験も積み、これからも楽しく頑張ってほしいですね。

ベリンダ ベンチッチ選手とは

ベンチッチ選手は、過去3年間、しばらく怪我で第一戦から離れていたので、昨日の試合で始めて知った方も多いのではないでしょうか。略歴をご紹介します。
  • 1997年スイス生まれ、身長175cm、右利き
  • コーチは父イヴァン ベンチッチ、初期はヒンギスの母
  • 2012年、15歳でプロ入り
  • 2013年 フレンチオープンジュニア優勝、ITF World Junior Champion
  • WTA大会3回優勝
  • 最高WTAランク7位(2016年)
(参考:WTA公式サイトWikipediaScroll.in

ここ一年間のベンチッチ選手の戦歴をSwiss Tennisで確認してみたら、現在WTAランキング10位以内の選手をことごとく倒していました。サバレンカ、クビトバ、ハレプ、スビトリーバ、ケルバー、プリスコバ、ジョージス、ウォズニヤッキ。そうそうたるメンバーを倒しており、すごいですよね…。また、大阪選手には3月にも既に一度勝っていました。

ちなみに、ベンチッチ選手は、昨日の大阪なおみ戦の後、WTAのインタビューにて、「クレーコートは必ずしも一番好きなコートではない」と答えているので、びっくりです。マルチナ ヒンギス同様、オールラウンダーとしてジュニア時代に鍛えられたからでしょうか。

筆者は、スイスフェドカップのコーチに時折会う機会があり、ちょうど3月にも息子の州大会でお会いしたばかりでした。当時、次のフェドカップの大会では、スイスはアメリカに遠征することになっていました。筆者が「アメリカに大阪なおみがいなくてよかったね。」と、冗談まじりに雑談をしていた時、「ベリンダは最近のびているのよ。」と話されていたことを思い出しました。

テニスは本当にかっこいいですね。好きな選手たちが活躍してくれるのは本当に嬉しいことです。これからもスイス選手も、日本選手も応援していきたいと思います。筆者はアメリカにも住んでいたことがあるので、アメリカ選手も応援していますよ!

「Madrid Open 2019 大阪ナオミ vs ベンチッチ(スイス) 戦に見る、クレーコートで戦うということ(動画+)」について書きました。

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